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大阪高等裁判所 昭和32年(ネ)903号 判決 1964年3月30日

控訴人 塚田政敏

被控訴人 内海忠義

主文

原判決を左のとおり変更する。

別紙第一物件表<省略>記載の16ないし18の不動産について昭和三二年二月二〇日、訴外吉田香と被控訴人との間になされた売買予約はこれを取消す。

被控訴人は控訴人に対し前項記載の不動産中17及び18につき神戸地方法務局相生出張所昭和三二年二月二〇日受付第三九四号をもつてなされた売買予約を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記、16につき同出張所同年三月一日受付第四四五号をもつてなされた売買予約を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記の各抹消登記手続をなすべし。

控訴人の別紙第一物件表記載の1、19ないし23の不動産、別紙第二物件表<省略>記載の不動産に関する請求はこれを棄却する。

控訴人の別紙第一物件表記載の2なないし11の不動産に関する請求は本位的請求、予備的請求共にこれを却下する。

訴訟費用は第一、二審を通じ、これを二〇分し、その一を被控訴人の負担とし、その余を控訴人の負担とする。

事実

控訴人は、原判決を取消す、昭和三二年二月二〇日訴外吉田香が別紙第一、第二物件表記載の不動産(但し第一物件表中12ないし15の不動産を除く)につき被控訴人となした売買予約及び別紙第一物件表中19及び21の不動産につき右売買予約の完結として同年三月一日になした売買は取消す、被控訴人は控訴人に対し別紙第一物件表中12ないし15、16及び23を除く不動産につき神戸地方法務局相生出張所昭和三二年二月二〇日受付第三九四号をもつてなされた売買予約を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記、別紙第一物件表中16及び23の不動産、別紙第二物件表記載の不動産につき同出張所同年三月一日受付第四四五号をもつてなされた売買予約を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記及び別紙第一物件表中19及び21の不動産につき同出張所昭和三三年九月一八日受付第二、八一二号をもつてなされた売買を原因とする所有権移転登記の各抹消登記手続をなすべし、右請求の全部が認容せられざる場合には別紙第一物件表記載の不動産中山林、宅地、田、畑の順序に記入番号順に前記売買予約及び売買を取消す、被控訴人は控訴人に対し右取消された売買予約及び売買を原因として前記不動産につきなされた仮登記及び所有権移転登記の各抹消登記手続をなすべし、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とするとの判決を求め、被控訴人は本件控訴を棄却する、訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とするとの判決を求めた。

控訴人は請求原因として、控訴人は昭和三一年一二月三〇日訴外古林義朗に対し訴外吉田香連帯保証のもとに金一四〇、〇〇〇円を、利息年一割八分、損害金年三割六分、同日より毎日七〇〇円宛二〇〇日間に支払う約定で貸付け、昭和三二年二月二〇日当時金一三二、三〇〇円の債権を有していたが、その後昭和三六年七月二〇日当時には右債権は元金一三二、三〇〇円及びこれに対する昭和三二年七月二一日以降の損害金二〇一、六〇〇円、合計金三三三、九〇〇円に増加した。

別紙第一、第二物件表記載の不動産は吉田香の所有に属するものである。

吉田香は控訴人に対する債務の外、訴外中浜広治に対しても昭和二八年一〇月以降昭和二九年五月二七日までに合計四四四、〇〇〇円(利息を加算すれば金五〇余万円)、訴外大山教作に対しても金一三五、五八〇円の債務を負担しているものであるが、昭和三二年二月二〇日叔父である被控訴人との間に右不動産を一括して代金三〇万円で売買予約をなし、請求の趣旨記載の如く、同日及び同年三月一日の二回に右不動産につき売買予約を原因とする仮登記手続をなし、次いで昭和三三年九月一八日別紙第一物件表中19及び21の不動産につき売買予約の完結ありたるものとして売買を原因とする所有権移転登記手続をなした。

しかしながら右不動産は吉田香の全財産であつて、売買予約当時の時価は別紙第一、第二物件表記載のとおり合計金二、九五四、一七二円に達するものであるから、僅か金三〇万円を代金とする前記売買予約は債権者たる控訴人を詐害する目的をもつてなされたものであることが明らかであり、被控訴人もまた悪意であるから、詐害行為として取消を免れない。

よつて控訴人は別紙第一、第二物件表記載の不動産(但し別紙第一物件表中12ないし15の不動産を除く)につきなされた右売買予約及び売買を取消し、これを原因としてなされた仮登記及び所有権移転登記の抹消登記手続を求め、若し控訴人の請求の全部が認容せられない場合には、別紙第一物件表記載の不動産中、山林、宅地、田、畑の順序に記入番号順に売買予約及び売買の取消、仮登記及び所有権移転登記の抹消を求めると陳述し、

被控訴人の主張に対し、控訴人が吉田に貸付けた金額が九八、〇〇〇円であつたことは認めるが、これに分割払期間中の約定利息を加算して金一四万円とし、これを一日金七〇〇円宛二〇〇日に分割して弁済する約定をなしたものであつて、古林は当初の一一日間だけ弁済したのに過ぎない。

右貸付の際公正証書を作成し、古林から担保として動産の提供を受けたことは認めるが、右動産は他の債権者から強制執行を受け現存しない。

中浜広治の吉田に対する勝訴判決は吉田本人出廷の上なされたものである。

控訴人がその後競売により本訴債権の一部弁済を受けたことは認めるが、控訴人の債権はいまなお金二三七、六六二円存在すると陳述し、

被控訴人は答弁として、別紙第一物件表記載の不動産が訴外吉田香の所有に属すること、右不動産につき控訴人主張の日時、吉田香と被控訴人との間に売買予約がなされ、且つ控訴人主張の日時その主張の如き仮登記がなされたことは認めるが、控訴人が吉田に対しその主張の如き債権を有することは不知、仮りに控訴人が吉田に対し債権を有するとしても、控訴人が古林義朗に貸付けた金員は九八、〇〇〇円であつて、これより古林の内払金一二、六〇〇円を控除すれば、控訴人が本訴提起当時古林に対して有した債権は金八五、四〇〇円に過ぎない。

また訴外中浜広治が吉田に対して債権を有することは否認する。同訴外人は虚偽の事実を陳述して金四四四、〇〇〇円の勝訴判決を獲得したものである。

被控訴人は昭和三二年二月二〇日現在、吉田に対し金六〇万円の貸金債権を有していたところ、近隣の者から吉田は他にも債務を相当負担していることを聞知し、吉田と話合の末、本件売買予約及び仮登記をしたが、これは被控訴人の吉田に対する債権確保のためである。殊に前記貸金には年三割六分の損害金も附随している。

以上のとおり被控訴人は吉田に対する債権確保のため、本件売買予約並びに仮登記をなしたのであつて、詐害の意思は毛頭ないから、仮りに被控訴人が予約完結の意思表示をすれば、その結果控訴人が多少不利益を受けることがあつても、被控訴人の関知するところではない。

のみならず本件不動産中の宅地、家屋は昭和三六年一〇月二〇日訴外梶田トシが金三九八、五八一円で、また山林は昭和三八年三月二三日訴外渡辺敏三が金一二三、三三四円で各競落し、控訴人は自己の債権額に数倍する配当金を受領し、しかも被控訴人は一円も受領していない次第であるから、控訴人はなんらの不利益を蒙つていない。

仮りに控訴人が本件売買予約によつて不利益を蒙り、これを免れんとするのであれば、当初吉田に古林の債務の保証をなさしめたときに債権確保の手段を講ずべきであつて、このような手段を講ずることなく、今日に至り、被控訴人が吉田に対する債権確保の手段としてとつた売買予約の取消を請求するのは権利の濫用である。

また僅々八五、四〇〇円の債権にもとずき、控訴人の主張によれば、一〇〇万円以上の吉田の財産処分の全面的取消を請求することは、権利の濫用であり、公序良俗違反である。殊に控訴人は古林に貸付けの際同人から担保として相当額の動産の提供を受けているのであつて、右担保を遅滞なく処分すれば、控訴人の債権は回収できた筈である。

控訴人は昭和三二年八月二八日付準備書面で本件訴訟の対象たる不動産を別紙第一物件表記載の2、8、9の三筆に減縮しながら、その後昭和三三年五月六日付準備書面により同物件表1、16ないし23の不動産に減縮する旨申立てているが、2、8、9の三筆に減縮した以上、1、16ないし23の不動産は既に本件訴訟の対象となつていないから、右五月六日付準備書面による減縮は不当であると陳述した。証拠<省略>。

理由

控訴人は当初別紙第一物件表記載の不動産につき吉田香と被控訴人との間になされた売買予約が吉田の債権者たる控訴人を詐害するものとなし、その取消と仮登記の抹消を訴求したところ、原審で控訴人全部敗訴の判決あり、控訴人はこれに控訴し、当審昭和三六年一月二八日の口頭弁論期日において別紙第一物件表中1、16ないし23の不動産についてなされた売買予約の取消及び仮登記の抹消に請求を減縮し、次いで昭和三六年一二月九日の口頭弁論期日において別紙第一物件表記載の12ないし15を除いた不動産、別紙第二物件表記載の不動産について各なされた売買予約、第一物件表中19及び21の不動産についてなされた売買の取消、これを原因とする仮登記及び所有権移転登記の抹消に請求を拡張し、他面控訴人は当審昭和三二年一〇月一〇日の口頭弁論期日において予備的請求として別紙第一物件表記載の不動産中2、8、9の不動産についてなされた売買予約の取消、仮登記の抹消の請求を付加し、更に昭和三七年一〇月二二日の口頭弁論期日において予備的請求を拡張し別紙第一物件表記載の不動産についてなされた売買予約及び売買の取消とこれを原因とする仮登記及び所有権移転登記の抹消を、山林、宅地、田、畑の順序に右物件表に記入番号順に請求するに至つたことは本訴の経過により明らかである。

しかしながら本案に付終局判決ありたる後訴を取下げたる者は同一の訴を提起することを得ざることは民訴法二三七条二項の規定するところであるから、控訴人は当審において一旦請求の減縮をなしたる以上、その後更にこれを拡張して原審でなしたる請求を付加することは許されざるものと解すべきである。

すると控訴人の屡次に亘る請求の趣旨の変更中、別紙第一物件表記載の1、16ないし23の不動産、別紙第二物件表記載の不動産に関するもの以外はすべて不適法として却下を免れない。

また控訴人は当審に至り予備的請求を追加したが、右予備的請求も結局本訴請求が一部認容の場合認容せらるべき不動産に順位を附したのに止るから、前記不動産以外の不動産に関する予備的請求も却下を免れない。

そこで別紙第一物件表記載の1、16ないし23の不動産及び別紙第二物件表記載の不動産についてなされた売買予約が詐害行為として取消し得るものであるか否かについて判断する。

別紙第一物件表記載の不動産について控訴人主張の日時訴外吉田香と被控訴人との間で売買予約がなされ、右不動産中16及び23を除いたものについて控訴人主張の日時その主張のような仮登記がなされたことは当事者間に争がなく、別紙第二物件表の不動産について吉田と被控訴人との間で、控訴人主張の日時売買予約がなされたことは被控訴人の明らかに争わないところであり、別紙第一物件表中16及び23の不動産、別紙第二物件表記載の不動産について控訴人主張の日時、その主張の如き仮登記がなされたことは成立に争のない乙第二号証によりこれを認め得る。

当審における控訴人本人尋問の結果、公証人公証部分の成立について当事者間に争がなく、弁論の全趣旨によりその余の部分も真正に成立したものと認める甲第三号証を綜合すると、控訴人は昭和三一年一二月三〇日金四九、五〇〇円、昭和三二年一月初旬金四八、五〇〇円合計金九八、〇〇〇円を訴外古林義朗及び吉田香を連帯債務者として貸付け、昭和三一年一二月三〇日より昭和三二年七月二〇日まで毎日金七〇〇円宛合計金一四万円を支払うこと、分割金の支払を一回でも遅滞したときは期限の利益を喪い、その翌日より完済まで法定制限最高の割合をもつて損害金を支払うことと約したこと、右貸金については当初の一一回分は遅滞なく支払がなされたけれども、その後は遅れ勝ちであつて、結局合計一七回分か一八回分の支払があつたことが認められる。

右消費貸借は金九八、〇〇〇円を貸付け、合計一四万円を返済するものであるから、一四万円中四二、〇〇〇円は金九八、〇〇〇円の利息に相当することが明らかであるところ、利息制限法は一〇万円以下の貸金については利息を年二割に制限している。ところで、金九八、〇〇〇円を昭和三一年一二月三〇日に一時に貸与したものとし、これを二〇〇日後に返済するとしても、同法所定の最高利率年二割の割合による利息は金一〇、七三七円(円未満四捨五入)に過ぎないから、本件消費貸借における利息の定めは同法に違背することが明らかである。

すると本件消費貸借は元金九八、〇〇〇円及びこれに対する年二割の利息金及び年三割六分の遅延損害金(前記甲第三号証によると損害金の約定利率は三割六分となること明らかである)の範囲で有効である。

そして右貸金に対し当初の一一日分は遅滞なく、その後の六日分あるいは七日分は遅れ勝ちに入金のあつたことは前記認定のとおりであり、遅れ勝ちの入金の日時及び一日分七〇〇円中、如何なる部分が元金に対する支払であり、如何なる部分が利息に対する支払であるか不明であるけれども、便宜二〇〇日間の利息四二、〇〇〇円を二〇〇分し、一日の利息を四二〇円と仮定し、七〇〇円中二八〇円が元金に対する支払として計算すると、一八日分一二、六〇〇円中五、〇四〇円は元金に対する入金となり、元金は概算九二、九六〇円となる。そして入金の最終日時を昭和三一年一二月三〇日から一八日目すなわち昭和三二年一月一六日と仮定し、特約により遅滞の翌日である同月一八日から同年二月二〇日まで年三割六分の遅延損害金を付するとしても、その金額は金三、〇〇四円(円未満切捨)となるに過ぎないから、控訴人が昭和三二年二月二〇日当時吉田に対して有した債権は貸金元金概算九二、九六〇円、遅延損害金債権概算三、〇〇四円、合計約九五、九六六円であると考えることができる。

成立に争のない甲第一、二号証、当審証人尾崎一郎、同吉田香の証言、被控訴人本人の当審尋問の結果を綜合すると、吉田は昭和二八年八月金四〇万円、昭和三〇年七月金二〇万円、昭和三一年三月金一〇万円合計七〇万円を被控訴人から借受けていたところ、吉田は昭和三一年二、三月頃他から差押を受けたので、被控訴人は吉田には他にも借金があると考え、同人に交渉の結果、同人の所有する全財産である別紙第一、第二物件表記載の不動産につき、代金を七〇万円とする売買予約をなし、これを原因とする仮登記を受けたこと、別紙第一、第二物件表記載の不動産の売買予約当時の時価は右物件表記載のとおりであること(合計額二、九五四、一七二円)、右売買代金は吉田の被控訴人に対する債務と相殺することとなつていることが認められ、右事実を綜合すると、吉田は右売買予約当時、これにより控訴人を害することを知つていたものと認めるのが相当である。そして被控訴人が右売買予約当時善意であつたことはこれを認むべき立証がないから、被控訴人も亦、右売買予約当時これによつて吉田の債権者を害することを知つていたものと認むべきである。

すると控訴人は民法四二四条により右売買予約を取消すことができるのであるが、その取消を請求し得べき範囲は詐害行為当時の債権額の範囲に限られるものと解すべきところ、右売買予約当時の控訴人の債権は概算九五、九六六円前後であることは前記のとおりであり、別紙第一物件表の、1、16ないし23の不動産、別紙第二物件表記載の不動産の時価が控訴人の債権額を上廻ること明らかであるから、控訴人は右不動産全部につきなされた売買予約の取消を求めることはできず、別紙第一物件表記載の16、17、18の山林につきなされた売買予約の取消を求め得るに過ぎないものというべきである。

右16、17、18の不動産につきなされた売買予約が取消された以上、被控訴人は右不動産につきなされた控訴人主張の仮登記の抹消手続をなすべき義務あること明らかである。

被控訴人は、本件売買予約及び仮登記は被控訴人の吉田に対する債権確保のためなしたのであつて、詐害の意思は毛頭ないと主張するけれども、被控訴人が善意であることを認むべき証拠がない。

控訴人は本件不動産中、宅地家屋は昭和三六年一〇月二〇日訴外梶田トシが金三九八、五八一円で、山林は昭和三八年三月二三日訴外渡辺敏三が金一二三、三三四円で各競落し、控訴人は自己の債権額に数倍する配当金を受領していると主張するけれども、被控訴人の立証によつては、控訴人の債権が消滅し、あるいは本件売買予約当時の控訴人の債権額より減少したことを認むべき証拠がない。

被控訴人は更に、控訴人は本件貸金に当り債権確保の手段を講ずべきであつたのに、このような手段を講ずることなく、今に至り被控訴人の吉田に対する債権確保の手段たる売買予約の取消を求めるのは権利の濫用であると主張するけれども、本件売買予約が詐害行為となること前記認定のとおりである以上、被控訴人の主張は採用しえないこと明らかである。

被控訴人は、控訴人は僅々八五、四〇〇円の債権にもとずき、控訴人の主張によれば、一〇〇万円以上の吉田の財産処分の全面的取消を請求するのは権利の濫用であり、公序良俗違反であると主張するけれども、当裁判所は控訴人の昭和三二年二月二〇日当時の債権額に応じ、別紙第一物件表記載の不動産中16ないし18の売買予約を取消すのであるから、被控訴人の主張は理由がない。

被控訴人は、控訴人は古林に貸金の際同人から担保として相当額の動産の提供を受けているのであつて、右担保を遅滞なく処分すれば控訴人の債権は回収できた筈であると主張し、前記甲第三号証によると、控訴人は古林に本訴金員貸付の際、同人から譲渡担保として四人用テーブル八個、同ビニールレザー張椅子三個、一人用椅子(パイプ)二〇個、置時計(オルゴール入)一個、ポツト(一〇人用)三個、グラス(ウイスキー用)三ダース、ナシヨナル電気アイロン一個の提供を受けていたことが認められるけれども、本件貸金は古林及び吉田を連帯債務者としてなされたものであることは前記認定のとおりであつて、連帯債務にあつては、債権の効力を確保するため、債務者は各自債権の全部または一部を履行すべき義務を有し、他の連帯債務者に資産あり、または他の債務者が担保を提供したるの故をもつて、債権者の履行の請求を拒否することをえざると同時に、債権者が連帯債務者の一人に請求するとはたまた同時または順次に総債務者に対し履行を請求することはその自由に属するから、債務者は各自債権者の一般担保たる自己の資産を債権者の損害において減少すべき行為をなすべからざる地位にあること連帯債務の性質に鑑み明らかであるから、他の連帯債務者たる古林が前記動産を譲渡担保に供したことをもつて、吉田の詐害行為の取消を否定する理由とすることはできない。

すると以上の認定と結論を異にする原判決はその限度において変更を免れない。

よつて民訴法九六条、九二条本文に従い主文のとおり判決する

(裁判官 岩口守夫 藤原啓一郎 岡部重信)

表<省略>

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